タスクとビーバーのダム

 昨年までとはうって変わって、夜のアポイントメントが少なくなった。

 

 会社としてはフルで予約が入って欲しいところだが、予約数を減らして高単価の仕事にしたほうが、個別対応の質は上げられる。以前から働き方を変えたかったので、強がり半分で願ったり叶ったりなのだ。

 

 そういうわけで、ぽっかり空いた夜の時間は、じっくりと夕食を作って味わって、デスクワークを片付けたり、部屋の三面の壁で増殖を続ける積ん読本に、向き合う時間を持てるようになった。

 

 そもそも、人間の集中力は長く続かない。1日中デスクワークしようとしても、続けられない。それどころか、グズグズしてなかなか取りかかれずに半日以上が過ぎていく。何か予定があったり、どこかで時間が区切られているほうが、取りかかりも早いし集中できる。まとまった時間よりも日々の隙間時間の方が、細切れなのに濃密なのだ。こんな小さな変化でも、これまで苦手だった時間管理やタスク管理に、小さいけど手応えを感じたのは確かだった。

 

 とはいえこれまで溜めに溜めたタスクは、ビーバーが作るダムのように積み重なって仕事の流れをせき止めている。掃除が神様を呼ぶのなら、汚れや物の停滞は貧乏神を呼ぶ。キャッシュフローまでせき止められる前に、なんとか解体しなければならない。大きな塊になったタスクは、取り組む前にくじけがちだが、work like a beaver 勤勉に、ビーバーのように働くしかないのだ。


 ちなみにビーバーのダムは大きな湖を作り、永久凍土を溶かすのだそう。その結果、永久凍土に閉じ込められたメタンガスなどが放出され、温室効果により地球温暖化へつながるとのことだ。

 環境破壊を行うのは、人間だけではない。保護すべき対象と思える動物や、自然環境そのものが、自らを破滅の道へと導くこともある。ビーバーにとっては本能的で自然な行為である「ダムをつくって水域=自分たちの生息域を広げる」という行為が、図らずも環境破壊へつながるのだから。

 この世に有機物が存在する限りは、少なからず環境破壊は起こるということなのかもしれないし、この地球も、宇宙すらも、諸行無常なのかもしれない。


【参考】

www.cnn.co.jp

true-buddhism.com